【井頭愛海インタビュー】役柄で様々な職業を経験できるのが女優を志したきっかけ「“叶ってきてるよ”って昔の自分に言ってあげたい」

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井頭愛海
井頭愛海

『フェルマーの料理』で“デキる”給仕役 

話題のドラマ『フェルマーの料理』(TBS系)に出演している井頭愛海さん。演じるのは、物語の舞台となる二つ星レストラン「K」の給仕係・黒崎麗子役。これまで演じた役にはないようなキャラクター & ルックスで、さらに新たな挑戦もいっぱいというこの役への取り組みについて聞いた。また22歳になり職業ものの役柄も目立ってきた今年を振り返ってもらった。

--今回の作品は、新たな挑戦がいろいろとある役柄のようですね。

「はい。舞台が二つ星の高級レストランということで、お皿の持ち方一つにしても、指紋をつけないようにとか、お皿を一度に3枚運ぶとか学ぶことが多くて、セリフの大変さより、動作についての大変さを(共演者の)みんなも感じていると思います」

--レストランに行ったときに給仕の方の動きを見ていると、持つというより、手に乗っけてるというような感じに見えます。

「指紋をつかないように指の腹で持ったり、小指を立てて2枚目の皿を浮かせる……だったり、コツはあるのですが、結構至難の業です。料理を崩さないように持っていくというのが大変。また麗子はフランス語が堪能という設定なので、フランス語の発音の練習も初挑戦。でもそれらも楽しませていただいているところです」

--クランクイン前には給仕役の特訓も行われたんですか?

「はい。作品では料理専門学校の先生に監修いただいているんですけど、サービスに特化した先生がいらっしゃって、お出迎えするときの言葉選びだったり、いろいろと指導していただきました。普段レストランに行ったときに聞いているような言葉でも言ってはダメなものもあって、そういうところまで気を遣われていたんだなと新たな発見がありました」

--改めて井頭さんから、演じる麗子のキャラクターについて紹介してもらえますか。

「給仕役の中では最年少で、仕事ができるほうじゃないかなと思っています。性格としては、クールで物おじしない、はっきり物事を判断し口にするタイプ。話すとき、私自身は語尾が尻すぼみになってしまうほうなんですけど、この役をやっているときは語尾まできっちりセリフを言って、腹から声を出すように意識しています。給仕として働いている時間以外のときのギャップというか、麗子がもつ強さと素直さの両面を表現できればと思います」

--麗子の素が見えるようなシーンも出てくる?

「まかないを食べるシーンがあるんですけど、そういうところでは、ちょっと違う一面を見せられるように心掛けています」

--見た目もこれまでの役以上にカッコいい。

「髪型も7:3みたいにビシッと決めています」

--そういえば、今(取材時)の髪型も以前と少し違うような気がします。

「ちょっと切りました。今回わりとボーイッシュ寄りな子というイメージがあったので、髪型から寄せていこうと思いました。練習しているときは不安だったりするんですけど、髪をビシッと決めて、カッコいい黒の衣装を着るとシャキッとなって、それで役に入っていけます」

--これまで演じた役でも髪型や衣装で気持ちが入っていくほうですか?

「それは大きいですね。私は毎回髪型を変えたいタイプで、前の作品(『波よ聞いてくれ』)ではウルフカットっぽくしてみたり、今よりもっと短いショートにしたこともあったし、作品によって変えています」

--今(取材時)でもわりとカッコいい系だけど、劇中ではもっとビシッとして、ちょっと男役っぽいような……。

「はい。わりとタイトめな感じでして。男まさりな印象が自分の中でもあって……。現場に入る前にイメージしていた役柄よりも、やっぱり、衣装を身にまとって、メイクして、メイクもちょっと強めな感じにしてもらって、髪型がビシッと決まると自分の中で、“あ、こういう髪型の子だったらこういう振る舞いをするかな”とイメージが湧いてくるのが面白いところだなと思います」

--井頭愛海史上最高に大人っぽくてクールな見た目かも。

「それはあるかもしれないです。前髪があることが多いんですけど、ぱっつんだとか。でも今回おでこモロ出しで。言い方がアレですけど(笑)」

--ちょっと宝塚の人っぽい?

「そう、男役みたいな意識もありますね」

--セリフ回しもちょっと男っぽい感じも?

「そうですね、話すトーンはひとつ下げて、力強い感じといいますか、“男には負けないぞ”みたいな感じの、肝がすわっている女の子というのが自分のイメージとしてあったので……」

--店以外でのシーンもあるんですか?

「今のところありませんが、でも麗子が私服で登場するシーンでは、結構攻めてる感じのファッションで、“足出し担当”みたいな感じで(笑)」

--おっ!(笑)

「ロングブーツ履いてて、まだ衣装合わせしただけで、どれが選ばれたかわからないんですけど、それを見て思ったのは、ちょっと大人の色気じゃないですけど、大人っぽいニュアンスのある女性なのかなとも思ったりして、意外とそういうところのファッションに気を遣っていて……」

--楽しみですね。さっきいろんな挑戦という話がありましたが、動き、フランス語、料理の知識などいろいろありますが、実は内面的な部分が一番の挑戦なのかも。

「強い女性役というのは今までなかったので、その中で自分の中で遊び心というか、そういうものをたくさん引き出せるかというのが、今回の挑戦なのかなと思います」

--ワインに詳しい役柄ということですが、普段飲んだりしますか?

「好きなんですけど、味の違いまではまだちょっとわからないです」

--まだ22歳ですからね。

「まだ苦味、渋みを感じて、めちゃくちゃ好きというわけではないんですけど、この料理のときにはなんかちょっと飲みたくなる、というようなことはあります。クランクインの前にはワインを買っておうちでグラスに入れる練習をやっていたので、この作品が終わったときには乾杯したいなと思います」

--同世代が多い現場ですが、年齢的にはちょい上の人が多い?

「そうですね、ちょっと上くらいの方が多いです」

--役者的にも一番年下?

「高橋文哉さんが同い年で、板垣李光人さんが一つ下ですが、お姉さんお兄さんが多いので、いろいろ助けてもらっています。またフランス語が得意という設定の中、フランス人とのハーフの方が二人いらっしゃるので、フランス語のセリフが出てきたときには発音などをお二人に聞いたりしています」

--撮影現場の映像などを観ていると仲の良い雰囲気が伝わってきます。

「はい。めちゃめちゃ仲がいいです! 空き時間には『“ひ”から始まる11文字を考えよう』とかゲームをしたりしてみんなで楽しんでいます。キッチンチームの撮影のときは私たち給仕側には結構待ちがあって、でもその間もみんなでおしゃべりしたり楽しく過ごしています」

--今までも同世代のメンバーでの作品も多かったと思います。学生役だとだいたい同い年設定ですが、今回は年齢もそれまでの経歴もバラバラで。

「そうですね。学生役は青春みたいなものがテーマですけど、そこに職業がプラスされると、一つの目的に向かってみんなで力を合わせて頑張るという要素がより強くなって楽しかったりするので、社会人役ももっといろいろやりたいなと思いました。でもいざその職業のことを知るとすごく大変なので、以前は“医療ものとかやりたい”と言ってましたけど、今は安易に言えないなと思っています(笑)」

--今年に入ったくらいから職業ものの役柄が増えてきている印象です。

「でもまだ『波よ聞いてくれ』と、この間少しだけ看護師役で出させてもらったのですが(『テレビ朝日系『ゆりあ先生の赤い糸』)、その3作ですね」

--『波よ聞いてくれ』はラジオ局のスタッフ役でしたね。一方でまだ学生役もちらほらと……。

「はい、学生役もまだやらせていただきたい気持ちもあります! 今年実際に本当の高校生の子と共演したことがあって……」

--『セツナ』(TOKYO MXほか)で?

「はい。主人公の女の子(雉八千流)と私が7歳差で。“7歳差かぁーっ”って(笑)。見た目はまぁなんとかまだ高校生としていけるかなと思いつつ内面が……。現場で『今何流行ってんの?』とかおばさんみたいなことを聞いちゃっていました(笑)」

--22歳にしてその感覚を味わうとは……(笑)。

「(笑)。でも18、19歳くらいの高校を卒業したばかりの頃は“制服恥ずかしい”というのはありましたけど、今は懐かしい気持ちになってむしろ“着たいな”という感覚になっています」

--今がちょうど端境期ですね。学生役も社会人役も両方できる。同世代の人がちょうど学生から社会人になっていく年齢ですし。

「はい。今年は新しい出会いも多かったです。ちょうど私の年齢で同世代のスタッフさんが増えてくる時期なので、今年『あ、同い年なんですね』という機会がすごく増えて、それが嬉しかったです。デビュー当時は自分も子供だったのにな……と思いながら。年下のインターンの人もいたり、時の流れは早いなって感じました」

--デビュー時は小学生で、もう芸能生活10年以上。

「11年目ですかね。私自身何も変わってない気がするんですけど(笑)」

--ずっとこの世界にいるからアルバイトも含めて一般の職業体験はできなかったと思いますが、それを役を通してできるのがいいですね。逆に一般の会社員ならそんなにたくさんの種類の仕事を経験できないですけど。

「そうですね。役柄でいろんな職業を経験できるがいいなと思って、それこそがこのお仕事を志したきっかけでもありました。それが年々叶ってきていることは昔の自分に言ってあげたいです!」

--これからもさらに。

「そうですね、年齢が上がるにつれて役柄の幅が広がるというのは嬉しいし、もっといろんな役柄に挑戦していきたい気持ちはあります」

--芸能界以外の、昔からの友達もそれぞれの職業の道を歩んでいるところでしょうし。

「ちょうど社会人1年目になります。就活の時期も“就活ってこういうものなのか”と思いながら話を聞いていました」

--就活といえば、今年は就活中の主人公の友人役を演じたNHKドラマ『わたしの一番最悪なともだち』もありました。

「はい、就活ってリアルにこういう感じなんだなっていうのがわかって、みんなの大変さを感じられました」

--この作品でもそうでしたが、女優デビューして以降、コンスタントに関西弁の役を演じている印象があります。

「そうですね、『わたしの一番最悪なともだち』は神戸が舞台の作品だったので。関西弁の役は結構途切れなく。すごく嬉しいですね。普段の会話は関西弁なので」

--井頭さんは関西弁が似合うというか、関西弁を喋る様子が可愛いというのもありますよね。

「本当ですか? 関西弁の役は任せていただきたい!(笑) そこも強みにしていきたいなと思います」

--今回の『フェルマーの料理』を通して吸収したいことは?

「職人の役なので、動きなどプロに見える見せ方を身につけたいです。実際のその職業の人のレベルまではできなくてもできるように見せるのが役者の仕事だと思うので、仕草だったりそういうものでプロらしさを出せるように、今回方法を見つけていきたいなと思います」

--今後給仕役に限らず、立ち姿や動きがかっこいい役などをやるときに繋がっていく気がします。

「作品で得たことが以降の作品で生かされたことは今までも感じていたので、それはきっとあると思います」

--その経験を活かして、来年もいいお芝居を! さっき医療ものという話もありましたが、どんな職業の役をやってみたい?

「警察官とか……」

--あ、今年は一日警察署長も経験しましたしね。

「はい! あと消防士とかもかっこいいと思うし、普通にオフィスで働く役もやったことがないので、スーツを着てオフィスでバリバリ働くような役もやってみたいなって思います」

--今回のような、見た目でわかりやすい職業に限らず、見た目は普通のOLだけど、内面で悩みやいろいろなことがある役とか。

「それこそ大人になったと感じられると思うし、学生ではない第二の扉を開けたような感覚になると思います。そういう新入社員的なポジションもやれればいいなと思います」

--最後に改めて今回の作品への抱負を。

「麗子はこれまで演じたことのないような役柄ですが、一つの役柄のイメージにとらわれないで、いろんな役に挑戦できるのは楽しいことなので、また一つのキャラクターを自分の中で試行錯誤して作っていけたらと思います」

井頭愛海(いがしらまなみ)
2001年3月15日生まれ、大阪府出身。2012年『第13回全日本国民的美少女コンテスト』で審査員特別賞を受賞したことをきっかけにデビュー。2017年NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインの娘役を演じて注目される。以降、映画『鬼ガール!!』(主演)、『メイヘムガールズ』、ドラマ『さくらの親子丼2』(東海テレビ/フジテレビ系)、NHK大河ドラマ『どうする家康』、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』などに出演。

ドラマ『フェルマーの料理』はTBS系で毎週金曜22時〜放送中。

夢破れた天才数学少年(高橋文哉)が、謎に包まれた料理界のカリスマ(志尊淳)とともに数学的思考で料理という難題に向かって立ち上がる……。
出演者や詳細なストーリーは公式HPにて

https://www.tbs.co.jp/fermat_tbs2023/

衣装:ワンピース/NATSUMI OKUMURA、 アクセサリー/KUTITTA

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