7月25日、テクノポップユニット・spoon+(スプーン)の3rdアルバム「eat」がリリースされる。
spoon+は中毒性が話題を呼ぶテクノポップユニット。その中毒性は、そのまま今作「eat」にも引き継がれている。前々作「birth」、前作「hear」で見せた高いPOP性をベースに、今作ではより深みを増したバラード曲も多数収録。Sweet Vacation のリミックスにも参加したTes.のUDAをはじめ、インディーズエレクトロ界で注目の若手作家が多数アレンジで参加し、ロック、エレクトロ、JAZZの要素をふんだんに散りばめたバラエティー豊かなアルバムとなっている。
●音楽評論家 宗像明将氏のコメント
spoon+の音楽は、いつも暗闇の中から現れて、聴く者の心の中を一杯にする。これは比喩ではない。ライヴではいつも舞台の照明を消して、ヴォーカルのacoの背景に投射される映像の光だけでステージが進行するのだから。そして、華やかな衣装やかぶりもの、凝ったプロジェクションマッピング、にぎやかでユーモラスなダンサーなどが、acoとともにライヴを展開していくのだが、耳を澄ますと、その歌詞は意外なほど心の奥を照らし出している。
「eat」はspoon+のサード・アルバム。作詞作曲も手掛けるacoは、ハリネズミと暮らし、可愛いモノの写真をInstagramにアップしている女の子だ。彼女とは5年ぐらいの付き合いだけれど、日常生活についてはその程度のことしか知らない。ただもうひとつ、acoは聴く者の琴線に触れるメロディーを書き、そして油断しているとグッと胸の中に迫ってくる歌詞を書くソングライターであることも知っている。ときに頑なに、ときにしなやかに、彼女の哲学をわがままなぐらいに表現する。「eat」を聴いてまず驚いたのは、2012年の前作「hear」よりもソングライティングの手腕が鮮やかになっていることだ。
acoの甘い歌声の表現はより豊かになり、メランコリックな世界も深く描く。サウンド面では、FQTQがアレンジした「ラブラボラトリー」の繊細ながらアタック強めなエレクトロや、MISSILE CHEWBACCAのshoesがアレンジした「パンツパラダイス」のギターポップかと思いきやジャジーなパートやウィスパーヴォイスも登場する展開が新鮮。男性ヴォーカルに“ぶつぐ BTG”を迎えたデュエット曲「アイスコンチネンタル」や、ラップのように響く「INSIDE」にも驚いた。メロウな「ナイトダイバー」にはフィッシュマンズを連想したし、「かくれんぼ」のノスタルジックでウェットな感触も新鮮。いつの間にacoはこんなに新しい技を覚えたのだろう、「最近ハリネズミを飼いだしたな」と思っていた間に?
「ポッピドゥ」でacoは歌う。「こころをいっぱいにしたら / せかいが暗闇になっても きっとぜんぶみつけられる」。いや、もうspoon+は聴く者の心を一杯にして、暗闇でも全部見つけているんだよ、とaco本人に伝えたくなる。「eat」は、そんな柔らかな光に包まれた食卓のような音楽だ。
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