【新谷ゆづみインタビュー】人見知り少女が演技の楽しさに目覚めたきっかけ「その自由さが私の心を開放してくれる源」
「さくら学院」の元メンバーで、現在は女優として活躍する新谷ゆづみさん。4月には人気ドラマ『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)の1話2話でメインゲスト役で出演し注目された。そんな彼女が3年前に撮影に臨んだ映画『(Instrumental)』が今月公開される。今回、この作品について、また女優活動への意気込みを聞いた。
--ドラマ『警視庁・捜査一課長』は“タイムリープ”を扱った凝ったストーリーで面白かったです。2話分のみの出演かと思いきや、新谷さん演じる“はるな”のエピソードは、今回のシリーズの横軸として、この先も展開がありそうな気配ですね。
「5話でもちょこっと出ていましたね。もしかしたら、これから最終話にかけて何か展開があるかもしれません」(取材時は5月中旬)
--やはり人気ドラマシリーズへの出演ということで反響が大きかったのでは?
「はい、びっくりしました! 地元(和歌山)にいるお母さんやおばあちゃん、その世代の人がずっと観てきたドラマなので、放送後には『新谷さんところのお子さん出てましたよね』って、いろんな人から連絡が来ていたみたいで(笑)」
--主演の内藤剛志さん演じる大岩一課長とのやりとりもいい雰囲気でした。はるなが幼い頃からの親子同様の付き合いという役柄でしたが、それがよく表れているような。
「内藤さんはカメラが回って撮影しているとき以外、ずっとお喋りしてくださって! 本当にリラックスできた現場でした。昔からテレビで観ていた人ばかりの現場だったので最初緊張していたんですけど、撮影中は緊張することはほとんどありませんでした」
--長年続いているシリーズということで、現場の空気にファミリー感が出ていたのかもしれませんね。
「キャストさんだけでなく、カメラマンさん、メイクさんなどスタッフさんもみなさん仲が良かったです」
--劇中、はるなはキャラクター的にほとんど笑わない印象でした。2話で事件の全貌が見えてくるのと同時に、少し笑顔を見せてきますが。新谷さんといえば、これまで出た作品も含め、笑わない芝居が多いイメージの役のイメージが強いですね。
「はい。今まで演じた役って笑顔のない役が多いです」
--やっていてどうですか?
「やりやすい気がします」
--明るい役柄よりも?
「私自身、性格がものすごく明るいです!というタイプでもないので、やりやすいかなと思います」
--“捜査一課長”は最近の撮影だと思うので今の印象と近いですけど、映画『(Instrumental)』では今よりかなり幼い印象ですね。
「はい。高校1年生のときに撮影しました」
--3年も前なんだ!
「こんなに経ってから公開が決まったのがものすごく嬉しくて!」
--監督はじめスタッフは学生という作品なんですよね。
「私が今年19歳なのですが、この映画を撮ったときの監督の年齢が19歳。だから今年で同い年になります」
--同世代としてその世界観は響くものがありますか?
「やっぱりこの作品は監督ならではの独特な世界観が表れていると思います。カメラから伝わるものというものがすごくあります」
--ここで作品の内容について紹介しておきましょう。新米新聞記者の真知子(秋田ようこ/八木優希)は、ある日訪れたコインランドリーで男子中学生の岡孝汰(黒澤凜士)と知り合います。自然と心を通わせていく二人ですが、真知子は次第に、孝汰が自分の幼いころの親友と同じ雰囲気を持っていると感じ始めます。その親友が新谷さん演じる佳子。演じるのに難しそうな印象でした。
「そうですね。主人公の真知子が大人になったときにいない存在だったというのが大きくて、でも私に似た男の子に出会うから、そこで通じるものってなんだろうって考えました」
--真知子が大人になったとき、なぜ佳子はいないのかは書くとネタバレになりますが、その背景をわかった上で演じなければならないのは難しかったのかも。
「はい。セリフも多くなかったので、真知子とのやりとりの雰囲気の中で、二人の関係性を作り上げるということが難しかったです。演じていた当時は、ひたすらその役について考えていて、作品が出来上がってから、“あ、こういうふうに見えていたんだ”となって」
--真知子とのやりとりの中で、佳子が何かを抱えているように見えるような。
「はい。そう見えるということは、そこまで考えて演じられていたんだなと、出来上がってから改めて感じられたかもしれないです」
--相手役である、真知子の少女時代役の八木優希さんはドラマ『薔薇のない花屋』(2008年/フジテレビ系)など数多くの作品に出演してきた、元名子役として知られています。
「ほんとに大先輩で。一緒にお芝居させてもらって、やっぱり安定感を感じました。落ち着いてるなって。ぶれないというか、一緒にお芝居をして安心できました」
--そんな『(Instrumental)』もいよいよ公開です。
「当時は配信や映画祭で公開されるとのことで、映画館で上映されると聞いてなかったので、びっくりしました。時間が経ってから上映が決まるということは、それだけこの作品に力があるということなんだなと思って嬉しかったです」
--学生主導の作品ということで、おそらく少ない予算で作られたと察しますが、となると撮影期間も短かった?
「短かったです。私の出演シーン数も多くなかったので。でもドラムを叩くシーンもあったり、場面は少ないながらもいろんな要素が詰まっていて」
--佳子が心に抱えている悩みを発散するかのようにドラムを叩いていますね。
「はい。なかなか激しい場面でした。事前にドラムの練習もしに行きました。佳子は音楽が好きで、普段からいつも音楽を聴いて指でリズムをとっているような、そこが真知子が大人になって出会う中学生の子と通じる部分があります」
--出来上がった作品を観てどんな感想でしたか?
「すごく静かな印象の作品なんですけど、その静かさが胸を打つというか、静かだからこそ、ゆっくり深く考えさせられる映画だなと思います。セリフが多いわけではないからこそ、一つ一つの言葉、場面を考えさせられ、強く何かを訴えかける作品だなと思いました」
--ところで、新谷さんはもともと女優を目指していたんですか?
「そうですね。なりたいと無意識に思うようになって」
--具体的に誰かに憧れてとかではなくて?
「この世界に入ったときから女優さんになりたいと思い始めました。映画を観るのが好きなので、誰かというより作品を観て感じとったものから、なぜか無意識に女優さんになりたいなぁって思っていました」
--そもそも新谷さんがこの世界に入ったきっかけは?
「漫画雑誌の『ちゃお』の『ちゃおガールオーディション』に自分で応募しました。当時は芸能界に入りたいと強く思って応募したわけじゃなくて、ちょっとはあったかもしれないんですけど、“もし受かったらどうなるんだろ?”という好奇心のほうが強かったです。2014年、小学校5年生のときでした」
--実は結構ベテランなんですね。
「自分でもびっくりします。全然実感がないんですけど。具体的な数字を見ると、2014年ということはもう8年か!って」
--その後、「さくら学院」のメンバーとしても活躍しますが、その時代に演技の経験は?
「普段はさくら学院の歌とダンスのレッスンだけで、たまに演技のレッスンを受けさせてもらったのですが、そのレッスンがものすごく楽しかったんです! 緊張するタイプなので、最初は毎回“どうしよう、演技レッスンに行きたくない”って思っていたんですけど、終わったあとに“あ、ヤバい、楽しい!”という気持ちになってバスで帰るというのが毎回でした」
--さっき“無意識に女優を目指すように…”という話があったけど、その演技レッスンの影響もあったのかも。
「はい。あったと思います。たまに行って楽しいと思えるお芝居って、意識してなかったけど、何か好きになる要素があるんだろうなと思って。中学生の頃から感じていました」
--今思えば何が楽しかったんだろう?
「うーん、なんだろう……」
--たとえば自分とは違う人物になりきれたり、ほかの人との掛け合いのお芝居が楽しかったり?
「掛け合いのお芝居かもしれない。普段人見知りで、初めて会った人とはあまり話せないんですけど、芝居だったらいくらでもいけるんですよ(笑)。それが楽しくて。なんの恥じらいもなく、初めての人にどんな言葉をかけてもいいという、その自由さが私の心を開放してくれる源で。すごく面白いと毎回思ってました」
--笑わない芝居が多いという話もありましたが、クリエイターから見て、普通の明るく元気な学生というより、何かを抱えているような役柄を演じさせたいという魅力が、新谷さんの中にあるのかも。
「えー、自分では全然思わなくて、どういうふうに見えているのか……」
--同じ“ちゃおガール”出身の先輩・山田杏奈さんもそういう魅力がありますよね。元気で明るいというより、何かを抱えている役がハマるという。
「そうかもしれないです。憧れです、大好きなんです、杏奈さんが! 写真集も買ったし。『警視庁捜査一課長』のあとに、『未来への10カウント』が放送されていたのがすごく嬉しかった! 自分が出てたあとに、続けて杏奈さんのドラマが放送されて! ずっと好きです」
--今後やってみたい役などはありますか? たとえば逆に普通に明るい役だったり。
「最近思うのは、明るい役でも、見えているのは一面だけで、ただ明るく見える中にも何か抱えているわけで、そこまで考えて明るい役をやってみたいです。明るい人が気づかないうちに抱えるものだったり、もともとある背景も考えて。ただ明るい役という伝わり方はしたくないと思っています。何も考えてなさそうと言われる人でも、抱えているものや悩んでいることはあると思うので」
--楽しい表情にふと見せる寂しそうなところがあったり。
「そういう表情のシーンがなかったとしても、考えてお芝居したい……そういう気持ちはずっと忘れずに持っていたいと思います。作品のなかでは一面だけしか見えなくても、その背景まで作り込みたいと、いつも思っています」
--最近演じた役でも台本にない部分まで考えて?
「はい、そうするほうが確実に表情の幅も増える気がします。最近すごくそう思います」
(プロフィール)
新谷ゆづみ(しんたに ゆづみ)
2003年7月20日生まれ、和歌山県出身。2014年少女漫画雑誌『ちゃお』(小学館)主催の「ちゃおガール2014☆オーディション」で準グランプリを受賞したことをきっかけに芸能活動を開始。2016年「さくら学院」のメンバーとして加入、2019年3月まで在籍した。その後本格的に女優活動を開始。映画『さよならくちびる』(2019年)、『麻希のいる世界』(2022年 ※主演)、『やがて海へと届く』(2022年)、ドラマ『卒業式に、神谷詩子がいない』(日本テレビ/2022年)などに出演。
映画『(Instrumental)』は6月25日より池袋シネマ・ロサにて公開。
一人の新米新聞記者の青春と喪失を、現在と過去を複雑に行き来しながら描き出した作品。基になったのは監督の宮坂一輝氏が高校生のときに書いた脚本で、大学進学後に映画サークルのメンバーを集め製作された。
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